◆スペイン、ア・コルーニャ『ヘラクレスの塔』が世界遺産に登録される!
スペイン北西部のガリシア州にある都市ア・コルーニャ(A Coruña)。古くから港町として 賑わうこの町は、陽光が反射して光り輝くガラス張りの建物が多いことでも有名で、別名『ガラスの街』としても知られています。今回世界遺産に指定された「ヘラクレスの塔」は、この町の旧市街地から2kmほど離れた岬にそびえています。
【ヘラクレスの塔の概要】
ローマ時代に建てられた灯台で、長い間放置されていたものを18世紀に改修したもの。現存するローマ時代からの灯台としては世界唯一。高さ59mの塔は、海抜約60mの岬に立ち、現在も海上交通の保全に重要な役割を果たしています。現在博物館となっている内部は見学可能で、234段の階段を上ると、素晴らしい眺望が楽しめる展望台があります。また、2008年9月から、アメリカ・ニューヨークの「自由の女神」と姉妹提携を結んでいます。
【歴史】
ア・コルーニャの湾岸の歴史は、ケルト民族の定住によって始まります。そしてトラヤヌスがローマ皇帝に君臨していた2世紀頃、ローマ人はその好立地に注目し、鈴や銅、鉄を求めてイギリス領の島々へ向かう船舶を誘導するための灯台として「ヘラクレスの塔」を建設しました。しかし5世紀頃、ノルマン人の侵略を受けたこの地の人々は内陸部へと逃れ、この港町を去りました。
13世紀に入ると、当時のスペイン国王アルフォンソ9世によって港周辺の復興が始まり、町は『クルニア』(Crunia)の名で呼ばれ、海上貿易の発達と共に大きく成長しました。しかし「ヘラクレスの塔」は、使用されることなく放置され続け、16世紀には塔の石材の多くが、今もこの町にあるサン・アントン城や城壁の建材として再利用されたと言われています。「ヘラクレスの塔」が再び脚光を浴びるのは、18世紀、スペインがアメリカ大陸やヨーロッパ諸国と海洋貿易を活発に行っていた時代です。当時のスペイン国王カルロス3世の許可を得て、1788年から1791年にスペイン・エクストレマドゥーラ州出身の建築家エウスタキオ・ジャンニーニ(Eustaquio Guiannini)の手で塔の復旧工事が行われ、現在の姿に生まれ変わりました。
【建物】
ローマ時代に建てられた当初は四角い塔で、最上階の三階には松明が灯されるドームが設けられていました。外部から各階へ階段かスロープが設置され、直接入ることができていたと考えられています。この仕組みを利用して、外から持ち込んだ薪を屋上階へ運び入れていたと言われています。
ローマ時代の面影は外観にはほとんど見られませんが、内部はその遺跡が展示される博物館となっています。現在の塔は、ローマ時代の塔に花崗岩の石板を張り、補強され大きくなった18世紀のネオクラシック様式の建物。新たに扉や窓を配置し、内部には展望台へ登る234段の石畳の階段が設けられています。また、最上階のドーム部分も取り壊して設置された八角形の小塔部分には、灯台のライトが設置されています。
塔の高さは59mで、海抜約60mの岬にそびえています。展望台からは、ア・コルーニャ市街をはじめ、遠くにはサダ島、ベタンソス島、アレス島やフェロールの町などの眺望を楽しめます。毎晩点灯される灯台のライトは、毎20秒に4光の白光を放ち、36kmの距離遠方からも確認することができます。また日中でも、霧などで視界が悪いときは、10km強の距離まで聞こえる注意音を出し、ア・コルーニャ沿岸部の安全航行に重要な役割を果たしています。
【伝説・言い伝え】
「ヘラクレスの塔」に関しては、長い歴史のなかで、多くの伝説や言い伝えが語り継がれてきました。
ア・コルーニャの原点
スペイン国王アルフォンソ10世の年代記の記録によると、この地域の住民はゲリオンという名の巨人に支配され怯えていた。ゼウスの息子のヘラクレスは、住民を助けるためこの巨人と戦い、3日間の長期決戦の末に勝利したヘラクレスは、巨人の首を埋葬した場所に、勝利を記念する塔の建設を命じた。
ブレオガン王
12世紀にケルト人修道士が書き記した「侵略記」には、ブレオガン王によりブリガンティアという町が築かれ、大きな塔が建てられたとある。その塔こそ、ヘラクレスの塔。ブレオガン王の息子の一人は、空気が澄んだ冬の一夜、その塔からうっすらと見えた島の侵略に挑んだ。彼の敗北の敵討ちにと、彼の弟が大群で攻め入り、当時ダーナ神族が暮らしていたその島を治めることに成功する。
鏡の歴史
ヘラクレスの甥のヒスパン王は、賢い人物として有名。彼は、ヘラクレスの塔の上に鏡を設置することで、一般市民にも岸に近づく船舶が敵か見方かを見分けられるようにしたと言われている。
【ア・コルーニャの街】
ア・コルーニャ市は、サンティアゴ・デ・コンポステーラがあるア・コルーニャ県の県庁所在地。サンティアゴから電車で約1時間(約1時間に1本)と近く、日帰りデスティネーションとしても人気が高い港湾都市です。
旧市街地では、中庭の美しいサンタ・マリア・ド・カンポ教会などが目を引き、町の中心として賑わうマリア・ピタ広場には重厚な市庁舎が建っています。海沿いを歩くと、まるで孤島のような岬があり、歴史考古学博物館が置かれるサン・アントン城があります。また、ガラス窓を多く使ったモデルニスモ建築も多い町です。市街地から少し離れると、沿岸部には海岸遊歩道が設けられており、サイクリングやウォーキングを楽しむこともできます。近代アートも盛んで、「ヘラクレスの塔」一帯には、複数の彫刻オブジェが屋外に展示されています。
古くから漁港として栄えたア・コルーニャでは、市場を覗くのもお勧めです。市場は通常日曜・祝日以外の午前中(08:00頃~14:00頃)に営業しています。
情報提供:スペイン政府観光局 Photo: (c)Wikimedia
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